「縁起の悪いカード」について



塔、吊られた男、悪魔、死神。 正位置逆位置ともに、
これら4枚のカードが出ると、いやな気分になる人が多いと思います。
しかし、ある程度タロットに慣れた人は口を揃えて「別に恐くも何ともない」と言います。




価値転換・成長のカード

タロットの大アルカナ22枚は、人間の意識のそれぞれの発達段階に対応していると言われます。
カードの種類にもよりますが、愚者または魔術師から始まって、世界または復活で終わる。
番号の小さい方から順に、意識の目覚め〜人格の完成 の段階を示します。

番号の小さい方は主に、○○でありたい、○○をしたい等、
より内面的で本能的根源的な意味を持ちます。
ただし、未熟さや独りよがり、逆境に弱い等の面も持ち、
良くも悪くも「子供の意識」の象徴と言えるでしょう。
片や番号の大きい方は、本能的根源的な喜びや感動は多少減るものの
現実の環境との調和を計りながらいかにして物事を達成していくかという、
「大人の意識」の象徴と言えます。

上記4枚のカードは、大体真ん中あたり12〜16番目くらいの位置にありますが、これは丁度、
初めにあった「子供の意志」が、決して楽とは言えない現実に出会い、鍛え上げられ、
「現実の中での達成」「大人の意志」に高められるための、大事な過渡期に対応します。
挫折というよりも、より本物に成長して行くための試練のカードと言えるでしょう。

また同時に、物事が良くない状態で膠着している場合は、この4枚のカードが出る事で、
突破口が開けたりもします。その意味ではかえって、この4枚が出るのが喜ばしいケースも多いです。


 The Tower

高い塔が落雷を受けて崩れ落ちる絵柄が一般的です。ちなみにこの塔は、
旧約聖書に出て来る「バベルの塔」(=人間の傲慢さの象徴)だとも言われています。
教則本には、事件事故、争い、物事の中断や停止などの意味が書かれています。
しかし他にも、鼻っ柱をへし折られる、プライドを捨てて謙虚になる、
「自分には何でも出来る」という思いこみを捨てる、自分の限界を悟る、等の意味もあります。
厳しい指導者に出会って耳の痛い意見(お説教)をもらう、素直に謝って仲直りをする、
無理をせずに休む、片思いの人が思い切って告白する、等の時に出ます。
逆位置の場合は、警戒心の欠如か、または過度の警戒心や不安感か、どちらかを示します。


吊られた男 The Hanged Man

吊された人、吊るし人とも呼ばれます。片脚を縛られて逆さに吊される男の絵柄が一般的です。
教則本では、我慢、努力、修行、禁欲、など。
しかし他にも、物事を逆さに見る(例えば、自分の立場ではなく相手の立場で)、
より高い次元の喜びのためにより低い楽しみを犠牲にする、
損をする事で得をする、等の意味もあります。
その高い次元の喜びが解っている人にとってこのカードは、辛くも何ともありません。
逆位置の場合は、自制心の不足か、または自分の責めすぎや間違った努力か、どちらかを示します。


悪魔 The Devil

悪魔の足許に人間がひざまずいている絵柄が一般的です。
教則本には、人をだます、人にだまされる、悪い誘惑、など。
むしろ本来の意味は、「本物と偽物を厳しく見分ける」という意味です。
石橋を叩いて渡る、お世辞に惑わされない、甘い誘いに乗らない潔癖さ、
酸いも甘いもかみ分けた良い意味の苦労人、
自分や相手の気持ちが本当に本物かを厳しく問いかける姿勢、等の意味もあります。
実占では、真面目で責任感の強い人が新しい恋愛に踏み出そうとする時によく出ます。
逆位置の場合は、偽物を本物と思い込むか、または本物を偽物と疑うか、のどちらかを示します。


死神 The Death

鎌を手にした骸骨の絵柄が一般的です。
教則本には、大事な(大事だと思い込んでいた)人や物を失う、孤独、欠乏、など。
むしろ本来の意味は、「本当に大事なものだけを残す」という意味です。
あってもなくてもどうでもいいものは、残らなくても構わない。
人も物もお金も、本当に最低限必要なものは、実は思った以上に少ないものです。
その区別がつかず、「あれもこれも欲しい」と思っていると、かえって苦しむ事になります。
肉親や愛する人に対する執着心、親離れや子離れ、物を処分する、骨組みをしっかりさせる、
余分な物をそぎ落とす、自分の本当の(裸の)姿でぶつかる、等の意味もあります。
好きな者同士が互いの本当の気持ちを確認し合う時に、良く出るカードです。
逆位置の場合は、大事な人や物を失う恐怖感か、本当に大事だという確信が持てない状態か、
どちらかを示します。



結び

私個人は、これら4枚のカードを決して嫌いではありません。
(最近で言うなら、吊られた男は特に好きなカードです)
これら4枚をいたずらに恐がらず、他のカードと同じように受け止められるようになった時、
タロットと本当の友達になれた、と言えるのかも知れません。
言い換えるなら、悪魔=遊び人、塔=ケンカ別れ、などと機械的な解釈しか出来ない占い師は、
未熟であると言わざるを得ません。

参考資料:「正統カバラ・タロット占術」斉藤啓一著 学習研究社刊

(2001-10-03)



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